ごー とぅー へぶんっ!

「これ、約束のやつだ」
部屋に着くなり実の兄をベッドへと引き倒したカラ松は、尻ポケットから黒の生地でドクロがアップリケされている財布を取りだし、「それ」を三枚取りだした。そして、いきなり乱暴な扱いをされたことに怒った男に向かって放り投げる。男は持ち前の器用さでしっかり三枚ともその手に収めると、にやりと、そして不安げに口角を上げた。
「なんだよ、随分強気だな」
「こうでもしないとお前相手にマウントなどとれないからな」
 カラ松はばさりと革ジャンを脱ぎ、床へと豪快に放り投げた。VネックのTシャツとスキニーの姿になったカラ松は兄の腰へと乗り上げる。ぎしりと男二人を乗せたベッドがスプリングの音を奏でた。
「深い闇夜へと溺れる覚悟は決まったか? おそ松」
「そんな大層なもんじゃねーだろ……。おどすなって」
 カラ松に乗り上げられたおそ松は、怯えたように、それでいてこれからの期待に震えるようにぴくりと口元を歪めた。

 

 実の兄弟であるおそ松とカラ松が付き合い始めて早くももう五年になる。六つ子の内の上二人で、同じ顔で同じ体の自分たちが何故惹かれあったのかは自分達でもよくわからない。気が付いた時には好きで、「俺お前とセックスしたいんだよね」「ああ、俺もだ」「あと、好きだよ」「ああ、俺もだ」と告白と言う名の暴露大会を経て、二人はめでたく恋人同士になったのである。
そんな二人が一番に優先していたのは、言うまでもなくセックスである。一世一代の告白が、セックスしたいで始まるような二人である。ロマンチックな夜景をクライマックスにするデートも、慎ましやかな生活を送りながらもお互いが傍にいることにささやかな幸せを抱く感性も、この二人には必要なかった。とにかくセックスである。目の前の愛しい男と抱き合い繋がり合って、快感に溺れることがこの世で一番に幸福なことである。正直に言えば、小六メンタルで単純思考にもほどがあるおそ松と、昭和的な感性を持ち頭の回転が速いとは言えないカラ松にとっては、下手な言葉よりも周りにある程度決められたデートコースよりも、殴り合いやセックスなどの肉体言語の方が性に合っていたのだった。
そしてそんな二人がこんな風に険悪な雰囲気を纏っている原因はといえば、さかのぼれば二時間前のことである。
パチンコ屋にも競馬にも行く気になれなくて、この日おそ松は競馬新聞を片手に二階の部屋で寝転んでいた。時空を超えた馬の名前を見ながら自分が負けた時のことを思い出し軽く苛立ったおそ松は、ポケットに入っていた煙草に手を伸ばそうとした。
その瞬間、部屋の襖がスパーンッと小気味良い音を立てて開かれる。肝の座ったおそ松はそれぐらいのことで大して動じなかったが、しかし、その襖を開けた正体には軽く目を見開いてしまった。
「カラ松?」
「……」
 ずんずんとおそ松の元へと重い足音を立ててカラ松は歩いてくる。うちの男どもの生活音がうるさくてと近所のおばちゃんたちに愚痴ってた母さんにまた小言言われるぞとおそ松は斜め上の心配をしたが、カラ松の何故か鬼気迫る表情にそれを言うことは叶わなかった。
「からま……うおっ!」
 どんっとおそ松の顔の真横に拳が叩きつけられた。
(え、えーーーー)
 怪力持ちのカラ松にそんなことを突然されれば、驚く驚かない以前に軽く生命の危機を感じてしまう。カラ松はそんな兄の姿に構わず、すうと軽く息を吸う。殴られるかと軽く構えをとったおそ松だったが、次に聞こえてきた言葉にまたしても目を丸くさせることになる。
「兄貴、ホテル行くぞ」
「……へ?」
 ぽかんと間抜けに口を開いたおそ松は、この場面において至極正しいリアクションをとったのである。
 ぱしっとおそ松の右腕を掴んだカラ松が軽々しくおそ松の体を立たせた。
「え? え?」
 そのままの勢いで歩き出したカラ松に、やっとおそ松はまともに思考が働き「待て待て待て」とその場に踏ん張りカラ松に制止の意の言葉を投げかけた。「ちょ、いきなりなんだよテメエ!」
「だから、ホテル行くぞって」
「いやだから何でだよ!? お誘いにしても怖すぎだよ!」
「フッ……俺は罪なギルトガイだからな、か弱き子猫ちゃんを怖がらせてしまうのも」
「うるせーよ誰がか弱き子猫だぶん殴るぞ!」
あと頭痛が痛いみたいなことになってんぞとか色々言いたいことはあったのだが、今はとにかくこの突拍子もない行動を突然やらかすサイコパス野郎に説明させることが先決だとおそ松は判断した。
「あと! 腕痛いんだけど!」
「すまない」
「すまないって思うならはなしてくんない?」
痛いという言葉には素直に反応してカラ松もやっとのことおそ松の右腕を解放する。掴まれたところをさすりながら、おそ松は怪訝そうな顔をカラ松に向けた。
「で、何なの?」
「え?」
「何で急にホテル行くぞとか言いだしたのって聞いてんの」
「ああ」
 カラ松にはあまり指示語が通じない。質問は一つ一つかみ砕いて投げかけてやらないと、まともな答えはカラ松からは返ってこなかった。
「……」
「何だよ」
「怒らないか?」
「いやお前が言わないとそれはわかんねえよ」
「じゃあ言うが……正直お前とのセックスが最近あまり気持ちよくないんだ」
漫画でいれば、点が六つほど頭上に書かれているシーンだろうか。
 ぽっかーんと、おそ松は顎が外れるほどに口を開いている。
「おそ松、顎が外れるぞ」
 かぱっとカラ松がおそ松の顎を元に戻す。ぱくっと素直に口を閉じたおそ松だったが、それでも驚きの声が漏れてしまった。
「へ……?」
「俺達、付き合ってもう五年になるだろう? マンネリと言うか……はっきり言ってセックスがつまらないんだ」
はっきりもはっきり、歯に衣着せぬ言いようでカラ松はばっさりと最近の二人の性交渉を評価してみせた。おそ松はカラ松のあまりの言い様に、思わずぱしんっと頭をはたいていた。
「いてっ!」
「何それ! お兄ちゃん泣いちゃいそうなんだけど!?」
「だから怒らないかって聞いたのに!」
「怒ったって言うかめっちゃ傷ついてんだよ察しろよ!」
「もっと言うならもう既に涙目だよ!」とおそ松は訴えかけるが、カラ松は頭の上にはてなマークをぽんぽんぽんと三つほど浮かべるばかりだった。
「お前が? 傷つく? 冗談だろう」
はっはっはとカラ松が軽快に笑い、またしてもおそ松がその頭をぱちんっと叩き「痛い!」とカラ松が嘆く。
「お前は兄貴をなんだと思ってんだ!」
「それはもういいんだが」
「よくねーよ! なんなの!」
「とにかくセックスがマンネリだからな、新しいことにチャレンジしたいと思うんだ」
 カラ松がおそ松の言動をまるで無視してきっぱりとそう告げる。おそ松はもう既に疲れてしまってカラ松の言うことを素直に聞くしか道はなかった。
「チャレンジ?」
「ああ、だからおそ松」
 ぴっとカラ松が指の間に挟んでいるものをおそ松の目の前に出した。
「これをやるから、今日のセックスは俺の好きなようにやらせてくれないか?」
 その指にあったものは、現金三万円だった。
「え……?」
 ぴらぴらと、カラ松が見せびらかすようにその金をおそ松の目の前に突きつける。習性でおそ松はふらあっとその金に飛びつきそうになるが、その瞬間にカラ松がばしんっと左手でおそ松の顔面を塞ぐ。
「イエスとお前が言えば、これはお前の物だ」
はっとおそ松が正気に戻る。目の前の三万円は確かに魅力的だったが、カラ松の条件はなんとも不透明なものであった。
「お前の好きなように……?」
「ああ」
 おそ松は、難しいことはよくわからなかった。即物的な欲を持っているし、目の前の誘惑に反抗することは魚が水なしで生きることを強要されることとおそ松にとってはほぼ同義だった。
だから、
「いいよいいよ! もう好きにしちゃって!」
 よく考える間もないまま、カラ松の提案に素直に頷いてしまったのである。

(あー! 何であんときちゃんと考えなかったんだよ俺のばかー!)
ベッドの上で、おそ松は見事に後悔していた。言うなら、ホテルへと向かう道すがら既におそ松の後悔は始まっていた。
おそ松の体を好きにする。それが意味するところはつまり。
(俺抱かれるのとかぜってームリー!)
 自分はこの五年間カラ松のことを抱き続けたというのに、なんとも勝手なことを思うおそ松であった。
(だってあそこうんこが出てくる場所じゃん! 出口であって入口じゃないじゃん! むりむりぜってームリ!)
 しかし、それをカラ松に言うことは叶わなかった。ホテルへと向かう最中、おそ松は何度も「ムリだ」と言いそうになって口をつぐんでいた。それを何度か繰り返していると、ふとカラ松の表情に気が付いたのだ。
(あ、)
 カラ松は、なんとも楽しそうにおそ松のリアクションを観察していたのである。
(あー! あー! コイツ!)
 今ここで怖気づくのかと。男が一度言ったことをこの数十分で撤回するのかと。兄が弟にやっぱりやめてくれと言うのかと。そう嘲笑っているようだった。
 そしてそんな笑いを見せられれば、おそ松が素直にノーと言えるわけがなかった。やってやろーじゃねーかとますますその意地を固くしてしまったのである。
 しかしいざホテルのベッドで押し倒されてみれば、ちゃんと拒否しなかった自分を死ぬほど恨むのだった。
「ん、んぅ」
 カラ松は今、おそ松のTシャツをめくりながら胸に唇を落としている。乳首には触れないまでも、その周辺をなぞるようにしている。それはおそ松がカラ松に普段していることと全く同じで、おそ松の欲求が悲しくも一つ満たされたのだった。
「おそ松、これどうだ?」
「くすぐってえ……」
「そうか。俺も最初はそうだったからな。段々気持ちよくなれるぞ」
 俺のテクにかかればおそ松もすぐ天国へ……とうっとりと言うポンコツ次男の頭をおそ松ははたいた。カラ松が乳首を気持ちいいと思えるように開発するまで三年はかかったのだ。そうそう急に気持ちよくなって堪るかとおそ松は舌打ちする。するとカラ松が気持ちよくないのかとしゅんとした顔を見せる。
「いや、しょげてもほどこされねーよ」
「……じゃあ舐めてみる」
「じゃあって何だよ」
 ぺろぺろと乳首をカラ松が舐めてくるが、生憎まったく気持ちよくない。ざらざらとしたべろの感触はくすぐったいだけだったし、そのくすぐったさというのもささやか過ぎるものだった。ちゅうっと軽く吸い付いてくるが、その顔はまあ可愛かった。カラ松には普段自分はこう見えているのかとおそ松は気づき、たまに自分がカラ松の乳首を愛撫している時に頭を撫でられるのも、可愛いと思われているのかとなんだか奇妙な心地になる。
 乳首への悪戯は終わったのか、カラ松はゆったりと上半身を起こした。そして、自分のTシャツのすそを両手で交互に持ち、ばさりと勢いよく脱ぐ。脱いだTシャツはカラ松の節くれだった男らしい指でつままれ、ぱさりと音を立てて床に落とされる。うっすらと腹筋のついた腹が惜しげもなくさらされおそ松は思わずごくりと喉を鳴らす。自分の体を見せつけるようにして服を脱ぐカラ松は雄の香りをこれでもかと漂わせていたが、おそ松にとってはもう五年もこの手で抱いてきた体であり、その綺麗な腹の中にもう数えきれないぐらいペニスを突っ込み精液を注いだ。ごり、とお互いの昂ぶっているものを擦りつけられ煽られれば、おそ松はひたすらにこいつを抱きたいと思うばかりだった。
「何だおそ松。随分物欲しそうな顔だな」
「おかげさまで……」
「まあ待つんだマイフェアリー。すぐに天国に連れていってやるさ」
「フェアリーって誰だ俺のことか」
 不意打ちに何度もあばらがやられそうになるが、生憎負傷している場合ではない。カラ松はかちゃかちゃとおそ松のズボンに手を掛け下着ごとあっという間に脱がしてしまった。
「何だ、ちゃんと元気じゃないか」
 カラ松の手のひらに包まれそれはびくりと震える。五年、もう長いことその体を見てきたが、今でも変わらずカラ松の裸はちゃんとおそ松を興奮させるのである。
「おそ松、イイコにしてろよ」
 ぱくりと惜しげもなく咥えられれば、おそ松はもう与えられる快感に身を任せるしかなかった。
「んむ、ん、んぐ」
「……ッ」
 じゅぷっと思い切りのどまで一気に咥えこまれておそ松は思わず息を詰めた。そのまま舌で裏筋をなぞられれば更にペニスは体積を増す。
(あー、きもちー……)
 カラ松はフェラが上手い。上手いというか、上達させたというか。おそ松はフェラをされることが大好きだった。カラ松と付き合う前までは、AVなどのシーンでもフェラの部分はとばすことが多かったのだが、カラ松に咥えられることを覚えてからは特に何をしなくても与えられる快感に身を任せるのはとても気持ちいいと知ってしまったのである。
「おそ松、どうだ?」
 べろりと舌で亀頭を舐められれば、うっとこみ上げる射精感を堪えることしか出来なかった。
「きもちーよ……」
「そうか」
 何がそんなに嬉しいのか、再び嬉々としてそこを舐めはじめる。もう半分以上反抗する気が薄れていたおそ松は、天井を見上げて熱い息を吐いた。
(あー、もうなんかいいかなー……)
 喉を使ってストロークされて、びくびくとそれがカラ松の口の中ではねる。快感にも弱いのが松野おそ松という男だった。
「むぅ、ん、う」
 ちゅ、ちゅ、と唇で性器全体にキスをされ、片手で愛しそうに全体を撫でられる。玉をころころと転がされれば、腰が浮き上がってしまった。
「か、カラ松、も……」
「ん……」
 先端に吸い付いていた唇が、ちゅぽんっと音を立てて離れた。射精する寸前でフェラを中断され、おそ松は思わず責めるようにカラ松を見る。
「おい……」
「わかってる。そう焦るな」
 カラ松がそう言って不敵に笑った。フェラをした名残なのか、顔はうっすらとおそ松色に染まり口の周りはよだれと先走りでべとべとである。更におそ松は自分のペニスがずんと重くなるのを感じた。
(生殺しかよ……勘弁してくれ)
 おそ松は息を荒くしながら片手で顔を覆う。入れたいのに入れられない。カラ松の中が恋しくてどうにかなってしまいそうだ。
「じゃあ入れるぞ」
 あ、ついにかとおそ松は覚悟を決める。ちゃんと指にローションつけてくれてるだろうなとか、出来れば小指ぐらい細い指から入れてほしいなと思ったが、いきたくてしょうがなかったのでまともに言葉を発することが出来なかった。
「いくぞ」
「……っ」
「は、ぁ、……ッ!」
 ずぷんっとそれが入る音がした。
「え、は、……ッ!?」
「う、うあッ」
 おそ松は突然襲い掛かってきた快感の波に逆らうことが出来なかった。
 おそ松の性器は、暖かくきつい粘膜に包まれていた。
「ちょ、ま、……うッ」
 びゅるびゅるっと勢いよく精液が出されたのは、カラ松の腹の中だった。
「ふあっ! う、ぁ……」
 入れた直後に精液を中に叩きつけられ、カラ松はびくびくと震えている。いつもならそんなカラ松を気遣うおそ松であったが、今はそれどころではなかった。
「ちょ、な、お前何して……っ!」
「え……?」
「な、何でお前俺のちんこいれてんの?」
 カラ松はおそ松の腰に跨り、おそ松の性器をその腹の中に迎え入れている。カラ松は「へ……?」となんとも気の抜けた声を吐き出した。
「何って、セックスだからだろう……?」
「そ、そうだけど……」
 おそ松は未だに混乱している。抱かれる気満々でいたら、いつの間にか自分のちんこはカラ松の中に入っていた。
「フッ……おれ、の、体が、あまりにも魅力的だった、か、ブラザー……? ん、ぅ」
 かっこつけているがその声はもう息絶え絶えである。そんな状態で言葉を装飾されてもむしろおそ松を煽るのみであった。
「お前、俺のこと抱くんじゃねーの……?」
 おそ松がそう言うと、カラ松は目をぱちりと瞬きをした。
「……? そんなつもりはないが……?」
「え、で、でも俺のこと好きにするって」
「え? してただろう、好きに」
 確かに好きにされていたが、こういうことかとおそ松は軽く頭を抱えたい気持ちになった。
「そ、そうだけどさ」
「お、れは、むかしから、お前に抱かれたいばかりだから……抱きたい、とは、思わない」
 え、とおそ松はカラ松からとんでもないことを言われた気がして、目の前がチカチカした。
え、とおそ松はカラ松からとんでもないことを言われた気がして、目の前がチカチカした。
「で、でもお前、セックス気持ちよくないっつってたじゃん……」
 未だカラ松の中にある性器がそのままで色々ときつかったが、どうしてもおそ松は納得できなくて尋ねてしまった。
「……」
 カラ松が上半身を倒して、おそ松の唇にキスをする。ぺろりと表面を舐められ、そしてかぷりと鼻に軽く噛みつかれた。
「ずっと、俺、お前に気持ちよくされるばかりだったから……」
 とん、と両腕を顔の脇に置かれて、カラ松の欲情しきった顔が目の前に降りてきた。
「だけど、セックスって、二人で気持ちよくなるものだろう?」
 ずず、とカラ松が腰を徐々に上げる。性器が扱かれる感触におそ松は息を顰めた。
「俺だけ、きもちよくされても、きもちよくないんだ」
 ずんっと腰を落とされ、おそ松は低い呻き声を上げた。
「俺だって、おまえをきもちよくしたい、から」
 カラ松の両腕が、おそ松の両腕を掴んだ。
「動くなよ」
 低く濡れた声が、おそ松の耳を愛撫した。
「……うぁっ!」
 カラ松が激しく腰を動かし、おそ松は思わず喘ぎ声を上げた。じゅぷっじゅぷっと激しい音が立ちおそ松の性器が出し入れされる。
「あ、あ、ぅ……ッ!」
 おそ松の甘い声を聞いてカラ松はうっとりと笑う。その顔が今まで見たことないもので、おそ松は更にその昂ぶったものをかたくさせた。
「はは……おそ、まつ、どうだ、俺の体の中は……ッ」
「……っあ、う、くっ」
「きもちいいか?」
 「ビンゴ―?」と、片手をはなされカラ松の右手は銃の形を作った。その手でおそ松の頭を打つジェスチャーをされ、おそ松は思わず頭にカッと血がのぼるのを感じた。
「てめぇ……ッ」
 解放された左手で、カラ松の腰を掴んだ。
「え、」
 そしてその勢いのまま、ずんっと思い切りカラ松の中を突いた。
「ひっ!」
 びくんっとカラ松の背がのけぞり、もう片方の手も解放された。
 おそ松は興奮したまま腰を両腕で掴み、めちゃくちゃに奥を突きはじめる。
「ひ、あ、あ、んァッ!」
 ばちゅん、ばちゅんとお互いの体がぶつかる音がして、それもまたおそ松の頭を沸騰させる。しかし、騎乗位に慣れていない体は段々疲労を訴えてきて、満足できるように腰が触れなくなってきた。
「ちっ……くそッ」
 舌打ちをした兄に、思わずカラ松がびくりと震える。おそ松はそのまま体を回転し、カラ松の体を組み敷いた。
「んんッ」
 急に自分の中の性器が向きを変え、カラ松はひぐ、と喉を鳴らす。
「あ、お、おそま」
「あのさー、お前、ポンコツなのもいい加減にしろよ」
 先ほどの仕返しというばかりに、おそ松は低く掠れ切った獣のような声で、カラ松の耳元で呟いた。
「誰が気持ちよくなんかないって?」
 ずぷんっと奥を拡張せんとばかりに突き上げてくるおそ松に、カラ松はひきつった声を上げてしがみつくことしか出来なかった。
「きもちいいに決まってんだろっ!? お前のケツん中の柔らかさわかってんのかっ」
カラ松の腸内はおそ松のペニスをぎゅうぎゅうと強く締め付け、抜くときには行かないでとでも言うように吸い付き、中を突くときは柔らかい壁でおそ松のペニスを迎え入れる。
「ばか、言ってんじゃねーぞっ、お前としてて、きもちよくねー、とか、思ったこと、一回もねーよ!」
 前立腺を性器全体で擦り、S字に届くんじゃないかとでもいうぐらいに奥を突けばカラ松はひゃんひゃん鳴いた。
「あ、あう、んあ、おそ、おそま、つ」
 片足を持ち上げ自分の体とカラ松の足が交互になるようにすると、更に深くペニスがカラ松の中へと入り込む。ここは自分の場所だとでもいうようにぐりぐりとおしつければ、はくはくとカラ松が声になり損ねた息を吐いた。
(ほんっと、ばかなやつ)
 この五年間、自分ばかりがおそ松に気持ちよくされているとでも思っていたのか。俺はおそ松に奉仕されているばかりだと本気で思っていたのか。ああ、なんていじらしくてばかなやつ。一番初めにこの体を暴いた時から、自分は二度と戻れないぐらいにこの体にぞっこんだというのに。
「や、あ、も、ごめ、おそ、おそまつ……っ」
「ばーかばーかっ! ほん、と、ほんと、ばかだよおめーは……ッ」
 ずんっと一際強く中を突けば、カラ松は勢いよく精液を吐き出して達した。おそ松もそれに続くように中で思いっきり射精する。
「は、ァ、ぅあ、」
 どぷどぷと中で出されている精液にも感じているのか、カラ松がぴくぴくと体を震わせる。おそ松はそれを抑えつけるようにその体を抱きしめていた。
「あ、あ……」
「な、カラ松」
 右手で銃の形を作り、カラ松の頭の横に添える。
「どうだった? 気持ちよかった?」
 バーン、といつものカラ松のように撃つ真似事をしてみせれば、カラ松はぽおっとした顔のままこくりと頷いた。
(ったく、誰だよマンネリなんて言ったやつ)
 そう呆れながらおそ松はカラ松の額にキスをする。
 自分の恋人がセックスで気持ちよくなっていなかったんじゃないかと、ばかでポンコツなことを考えていたカラ松にもう一度教えるために、おそ松は再びその性器をかたくさせた。